中国~ミュールと月亮山~

2006年09月23日

今日は昼頃に目覚め、昨日のうちにスーパーで買ったパンとオレンジジュースを宿の前の路地に出ているテーブルで食べた。今日も日差しは強い。 


マカオからの移動の疲れもあってか、朝食を食べ部屋に戻ると眠気に襲われしばし横になる。同室の皆はどこかに出かけたようだ。 


旅が始まり2週間ほど経過したが、動き出さなきゃ何も起きないことを痛感しはじめている。眠い目をこすり、一念発起して身支度を整える。宿から自転車で1時間ほどの月亮山という、山の真ん中に奇妙なことにすっぽり丸く穴が開いた山へ行ってみることにした。 


宿で一日10元(160円くらいかな?)のレンタサイクルを借りる。前後ともにサスペンションが付いた、なかなか良いマウンテンバイクである。 


まずは、近所のスーパーに行って水やジュースを買い込む。ここ中国でも観光地価格はかなりぼったくられるので、念には念を入れてのお買い物だ。 


いざ出発してみると、道路の状態が悪く、排気ガスと舗装の甘い道路のせいで空気が悪い。サスペンションの付いてる自転車がとりわけ豪華なものではなく、道が悪いからこれが当然なものだと気づく。 


奇妙な岩というか山に囲まれた道路を走ること40分。久々のサイクリングでテンション上がりっぱなしで、気がつけば鼻歌まで歌ってしまう始末。あっという間に月亮山に到着。ここは観光名所でもあるため、入山料15元と自転車の駐車代で1元取られる。 


駐輪場に自転車を置き、そばにあったベンチで一服。ジュースを小さなクーラーボックスに入れた、飲み物売りのおばさんが近寄ってきてジュースをしつこく売りはじめる。とりあえずおしゃべりしてみたが、意味不明。「何言ってるか分かんねぇよ」と中国語で言ってみると、びっくりした顔をしていた。 


おばさんをほっといて、山に登ることにした。しかし何故かおばさんもついてくる。俺が疲れて立ち止まると、団扇であおいできたり。隙を見てダッシュで登ると、おばさんは息を切らしながらも追いついてきた。お互い顔を見合わせて笑った。 



そんなこんなを繰り返し、山の中腹のぽっかり穴が開いたところまで到着。目下には水田が広がり、奇妙な形をした山(岩なんだけどね)が無数にそびえ立つ。日本じゃ見れない景色だ。 


白人の観光客も多数訪れていた。みな写真撮影に夢中だ。僕がスペイン人のデブな女と少し話をしていると、場違いなミュールを履き、ワンピースを着た色白の中国人の女の子がやってきた。あからさまにハイキングの人達の中では浮いている。 


その女の子はジュース売りのおばさんと話していたが、なんだか少し困った様子だった。僕にスペイン人のデブが、「あの子写真とってほしいんじゃないの?」なんて言ってきたが、耳を済ませて聞けばまるで違うことを話していた。 


せっかく山を登ってきて写真を撮ろうとしたのに、デジカメの電池が切れているようだった。「でぃえんちー、うんたらかんたら…」と聞こえたのだ。ジュース売りのおばさんもさすがに電池までは売っていないらしく、女の子は肩を落としていた。 


ハイキングにワンピースでミュール。そんな彼女が気になって、英語のできるジュース売りのおばさんを捕まえて、僕は彼女に話してみた。「俺のカメラで取ってあげるから、メールで送ってあげるよ。」何とか僕の意思は伝わり、彼女にメールアドレスを書いてもらい、何枚か写真を撮った。可愛いのにワキ毛ぼうぼうである。 


写真を撮って、色々身振り手振りでの会話が始まった。 
「あなたのアドレス書いてくれますか?」とか、たった一言の会話も3分ほどかかる始末。僕はさよならを言って、下山しようと思ったが、ジュース売りのおばさんがこう言った。 


「彼女と山頂まで行ってきなよ。うひひ。」 


山頂まで上る気力がないので、頑なに断っていたが、彼女に「行きませんか!」と笑顔で言われて即決。10分ほどかけて中腹から山頂まで登った。彼女はミュールを履いているのに、苦も無く登っていく。白人の大人がつまずき転びそうになっている脇をすり抜け、すいすい登っていく。草木に捕まり、ぐんぐん登っていく。都会育ちではないのだろう。 


山頂に着くと彼女は白人達のヒーローだった。 


「あなたそんな靴でよく登ったわねー!すごいじゃない!」 
彼女の足元を写真に収めはじめたりしちゃってる。なぜだか僕は自分の彼女のように誇らしくなった。 


山頂での眺めはすばらしく、ここまでくるきっかけを作ってくれた彼女に感謝した。お互いの写真を数枚撮って、中腹まで降りることにした。険しい道では手を貸したり、なんだかデートみたいである。 


山の中腹でジュース売りのおばさんの攻撃に負けた彼女は、僕の分の水まで買ってくれた。キンキンに冷えたその水はとても美味しく、二人で水を飲みながら笑った。 


「降りましょうか?」 


彼女が身振り手振りで伝えてきたので、僕達は山を降りることにした。二人っきりかと思いきや、商売を終えたジュース売りのおばさんも一緒だった。 


彼女はほどなくしてミュールを脱ぎ、素足で山を降り始めた。石畳があるとはいえ、痛いはずだろうに。彼女は痛くもなんともないわ、効率がいいのが大事なことよ、ってな顔をして素足でぐんぐん歩いた。 


清楚な感じの彼女の一挙一動のどきどきしてしまった。 



山を降りたところでしばし筆談。なかなか意思の疎通が取れなかったが、彼女は根気良く僕との会話に付き合ってくれた。お互い帰ることにしたのだが、行き先は同じ町だった。しかし僕は自転車で彼女はバス。バス乗り場まで着いていって、握手をしてバイバイした。なんだか中学生のころのデートみたいだった。 


僕は宿までの道のりを走りながらぼやいた。 



一期一会なんだな、と。 


宿に帰ってシャワーを浴び、疲れた体に鞭を打って街にでた。会えるかも分からない彼女の姿を探しに。 


結局、彼女に姿は見当たらなかったけど、空腹と疲労でビールは格別の美味しさだった。 

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