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七つの祭壇の意を持つ「シエテ・アルタレス」へ~リビングストン・グアテマラ~


二日酔いなのか少し気だるい目覚めは、どんよりとした空模様と妙にマッチしていた。

ちょっとばかり飲みすぎたのは否めないのだけど、ギフィティを飲んでいたせいか腹だけはバッチリ減っていた。

「本当に胃の薬になるのだなぁ。」と感心しながら目覚めの一服をつく。

しばらく天気は持ちそうだし、ここは1つ朝食をしっかり食べてからシエテ・アルタレスと言う水棚のある場所へ向かおう、と一日の予定を決めた。

僕は宿を出て町の中心と反対方面に歩き出した。

ここ数日朝食を取るのに利用している商店が少し先にあるのだ。

レストランでも安食堂でもなく日用雑貨や飲み物を扱っているただの商店なのだけれども、その店の親父がゆっくりのんびりと朝食を作る様子と飯に付いて来るいラー油のような油っ気の強い辛めのソースが気に入ってしまって何度か足を運んでいた。

まだ豆の形がしっかりと残ったフリホーレスと、トマトソースのかかった半熟の目玉焼き。それにパンが数切れと言う質素な朝食なのだけど、僕はこれをえらく気に入っていた。

最初はそれぞれの味を楽しめるのだけど、食事が進むにつれて色々な味がごちゃ混ぜになってくる。

フリホーレスの汁と目玉焼きの黄身、さらにはトマトソースが混ざり合った所にお気に入りの辛いソースを垂らす。そのごちゃ混ぜになった汁をパンに吸わせて食べる、これが抜群に美味しいのだ。

店先に用意されたプラスチックの椅子に腰かけ、通りを行く人々の往来に目をやりながら朝食をゆっくり味わう。

リビングストンは人懐っこい人が多い。ここで朝食を取っている時も良く声をかけられる。特にガリフナの連中は「よう兄弟!調子はどうだい!」ってな感じのノリのいい挨拶の言葉を投げかけてくれる。

「今日はコーヒーは飲むか?」と、商店の親父がニヤッとしながら聞いてきた。

僕はそれを丁重に断って食後の一服を始めた。

この店に初めてやって来た時にも僕は同じ質問を投げかけられていた。

その時は勧められるがままにコーヒーを頼んだのだが、支払いの段階でそれが別料金だと初めて分かった。目の前で作られたインスタントコーヒーに100円ほどの金を払うのが嫌で、僕は値切り交渉を始めたのだ。

「コーヒーが別料金なんて今聞いたよ!さっき煙草をあげたろ?それでコーヒー代をちゃらにしてくれないか?明日も食べに来るからさ!」と、勢いでまくし立てて朝食の代金丁度の金を親父に握らせた。

「明日も、か。」

と、親父は小さく呟いて首を縦に振り僕の提案を飲んでくれたのだった。

そんな事もあってか、親父はニヤリとしながら同じ質問を投げかけて来たのだ。

僕は食後の一服を終えると親父に朝食の代金を払い、一度宿へ戻った。

カメラの充電を確認したり地図でシエテ・アルタレスへの行き方を調べるためだ。スマホの地図では歩いて1時間半で到着すると表示されていた。

行き返りの歩きだけで3時間もの行程だ。 けれど日頃の運動不足もあり身体を動かしたかったし、何より重いバックパックさえしょっていなければ歩けない距離では無い。

身支度を済ませて宿を出ると街の中心を通りぬけ、海岸線へと出る道をひたすら進んで行った。初めて歩く場所は時間が読めないので、身体より心の方が疲れてくるのが早い気がする。

海岸線に出る手間で吊り橋が架かっている川を渡った。

こう言う吊り橋なんかを渡っていると冒険心がくすぐられてワクワクしてくる。

吊り橋を渡ってしばらく歩き海岸線に出ると、小笠原の父島や兄島でよく見かけたタマナの木の姿があった。

島のみんなは元気にしているのだろうか?などと少しばかり郷愁を感じながらそれらを横目に浜を進んで行った。

歩みを進めていくと浜はどんどん狭くなり、とうとう岩場にぶち当たってしまった。そこで丘へと進路を変えてジャングルをある事5分ほどか、シエテ・アルタレスの入り口に到着した。

いくつか立ち並んでいる草ぶき屋根の小屋の内一つがチケットオフィス兼レストランで、そこを管理するガリフナに入場料を支払って奥へと進んでいく。

まず最初に現れるのが、川幅一杯に広がるコンクリートで作ったかのように見える直線的な水棚だ。ダムの壁面を見ているような、つるっとした水棚の壁を薄く水が流れてゆく。

水棚はそこそこ深いようで、奥の方に見える滝からグアテマラ人が飛び込んで遊んでいたりしていた。

雨季には水の流れが激しいようで、水棚のへりにはロープが掛けられていてそれを頼りに対岸へと渡る事になるらしい。

対岸へ渡り、ジャングルの中の道を登って下ってとしばらく進むと、何層にも重なった水棚が目に入ってきた。

川幅一杯に広がった棚のへりだったり、1メートル位の幅の棚が折り重なって構成されている場所だったりと、基本的に丸みを帯びた水棚の個性豊かな様々なフォルムに目を奪われた。

ある場所を集中してみていると、固まり切らない溶岩もしくはモルタルが川上から川下へまるで生き物のように進んで行く様に見えてきてしまったりする。

川の流れも激しいものでも無く、木々に囲まれたジャングルの中でとても静的な場所なのだけれども水棚を見ているととても動的な場所にも思えてきた。

ある一点を見ているとアニメ『AKIRA』の中で鉄雄の体がどんどんと膨張していくシーンを思い出させるような、そんな場所もあった。

その辺にあった木と竹で作った手すりを頼りに5分~10分ほど川上へと歩くと、行き止まりの壁のように存在する滝と深い滝つぼにぶち当たる。ここまでが見学コース、のようだった。

ここにたどり着くまでに見て来た水棚の面白いフォルム達のせいで、この滝と滝つぼがそんなに面白いものには思えなかった。

けれども、リビングストンと言う陸の孤島の、さらにその最深部までたどり着いたような達成感からかとても満ち足りた気持ちになった。

7つの祭壇と言う意味を持つ「シエテ・アルタレス」。

本当に何となくだけど、その名前が付いた理由が分かったような気がした。

#グアテマラ #リビングストン #シエテアルタレス

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