ベトナム~絵を買ってくれ~

2006年11月19日

昨日の朝、フエの町から乗換えを含めてバスで17時間ほど南に走った、ビーチの美しいニャチャンの町に来た。西洋人のリゾート客もかなりいて便利な町。 


フエの町を離れる時、長い移動に備えて食堂に入っていつも食べている屋台より若干高い昼ごはんを食べていた。客引きの少年が僕のTATTOOに興味を示し、話しかけてくる。 


「ビューティフル。」 


ありがとう。そう言って僕は運ばれてきた肉野菜炒めの掛かったご飯を口にする。彼はほとんど英語ができないらしく、顔を見合わせるだけで会話にならない。 


飯を食い終わる間際、プラカードのように英語が書かれた画用紙を胸に抱えてその少年がやってきた。英語のできる人間に頼んで書いてもらったのだろう。大まかに言えばこんなような事が書いてあった。 



「こんにちわ。僕はお金がありません。兄弟は妹もいます。お母さんは病気で病んでいます。薬を買うお金もありません。だから僕の書いた絵を買ってください。」 


プラカードを見せおわると、絵を見せ始めた。別にどうって事のない、多少絵心があれば書けそうな風景画だった。欲しくもなんともない。欲しくも無い物を偽善で一枚買ったとしても、これから続いて行くであろう旅の最中で、その絵はぼろぼろになり捨てることになるだろう。 



薬も買えない。お母さんが病に倒れている。 



人の情に訴えているのは分かる。僕の目をずっと見て、無言の訴えを彼は続ける。でも、僕はどうしても買う気にならなかった。 


「俺には必要ない。」 



分かったのか分かっていないのか、なかなか立ち去らない。少し心が痛むが、繰り返し必要ないんだ、僕はそう言った。僕が買う気が無いのを悟って、ようやく少年は立ち去った。 


フエからここニャチャンの町へ来る途中のバスの休憩所でも、小さな子供たちの物売りたちに囲まれた。サンダルも履かず、はだしで土ぼこりの上を走り回り商売をする。 


バナナを買ってくれとか、お菓子を買ってくれとか。 


最初はかたくなに断っていたが、だんだんおいしそうに見えてきて、何人かの売り子をやり過ごした後一人の少女からバナナを買うことにした。 


買ったバナナを一本食べていると、一番最初にバナナ売りに来た女の子がまた寄ってきた。もう僕は買ったというのに、何で来たのかな?そう思っていると、僕を睨みつけ、何かをつぶやきながら彼女は僕の足を蹴った。 



自分のバナナを買わなかった僕が憎かったのだろうか? 



物乞いや売り子の子供たち全てを相手にしていては体もお金も持たない。日本に居たって乞食相手に金を恵んだことも無い。 



旅先で色々な人にご馳走になっている。明らかに僕のほうが旅の資金としてお金を持っているのに、仲が良くなった人々は食事や飲み物を豪快にご馳走してくれる。向こうから奢ってくれなんて言葉は聞いたことが無い。乞食が手を差し伸べてくる以外は。 



沢木耕太郎の深夜特急の中でも同じような事で悩むくだりが有る。タイでホテルの従業員が売春をしつこく斡旋してきたときに、金が無いから買わないと言ったら、その従業員にこう言われて悩んだそうだ。 




「トーキョーから飛行機に乗ってきて金が無い?良くそんな事が言えるではないか?」 


と。 


僕はそこまで強烈に何かを言われたわけではない。 




持つ者と持たざる者。金持ちか貧乏。中流って言葉がなんとなくだけど、とても日本的な言葉に思えた昼下がり。

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